人体600万年史

−科学が明かす進化・健康・疾病-
著:ダニエル・E・ リーバーマン
訳:塩原 通緒
早川書房 (2015/9/18)
ISBN:9784150505110/9784150505127
ウェブ広告内容説明
「非力なヒトはなぜ厳しい自然選択を生き残れたのか。走る能力の意外な重要性とは何か。
脂肪が健康を害するなら、なぜヒトの体は脂肪が溜まりやすくできているのか。
2型糖尿病など、現代人特有の病はそもそもどうして現れたのか…
人類進化の歴史をさかのぼることは、不可解な病がどこから来たのかを教え、ヒトの未来を占うことにもつながる。
「裸足で走ることへの回帰」を唱えて名を馳せた進化生物学者リーバーマンが満を持して世に問う、人類進化史の決定版。
 
「人体」という言葉が出てくるが、解剖学的に人間の機能を述べた本ではない。
約600万年前に、ヒトの祖先が類人猿の祖先と枝分かれした、とされる。
二足歩行を初めた当初は、百万年の単位でゆっくりと進化する。
食物としての果実離れは、400万年前。
狩猟採集生活に入った、200万年前。
旧人の世界各地への拡散(氷河期)
ホモ・サピエンスの地球各地への拡散
言語や文化の発達(後期旧石器時代
農耕生活による人口拡大・飢餓
都市集中の成り行きとその弊害
産業革命での、飛躍的な富の集中と格差
近代生活の成立と衛生環境の改善
工業化された食物摂取
最後の項目になるほど、急速に変化する生活環境。

しかし、我々の身体は、基本的に一番長かった黎明期の構造を維持しているため、現代生活にそぐわない面が各種の病気として発現している。
それは何故か?どうすれば良いのか?何を食べれば良いのか?
の疑問に対する答えのヒントを考えさせてくれる。
 
訳文はこなれていて、たいへん読みやすい。一点だけ・・・
自然選択とは「適者生存」(Survival of the fittest)のことだと誤って思い込んでいる人がいる。ダーウィンは一度もこのフレーズを使わなかった(中略)
自然選択は、比較級で「適者生存」(Survival of the fitter)と言いあらわしたほうがいいものだからだ。p278
は、原文により沿うように、
自然選択とは「最適者生存」(Survival of the fittest)のことだと誤って思い込んでいる人がいる。ダーウィンは一度もこのフレーズを使わなかった(中略)
自然選択は、比較級で「適者生存」(Survival of the fitter)と言いあらわしたほうがいいものだからだ
と訳語を言い換えた方が良かったのではないか。