ヒトの起源を探して

―言語能力と認知能力が現生人類を誕生させた-
著:イアン・タッターソル
監訳:河合 信和
訳:大槻 敦子
原書房(2016/08発売)
現生人類の進化系統について述べた本は、新しければ新しいほど最新の知見に基づいて(過去の訂正がなされ)いるので、よい傾向にある。
本書は、原著:2012年なので、2010.08/18に取り上げたアン・ギボンスの「最初にヒト」以降の古人類学の発見も包含した内容になっている。
しかし、監訳者あとがき(2016年)では、それ以降の新発見にも言及され、新情報がどんどん発表されていることが分かる。
下図は、p39だが、おそらく数年先には改訂されているだろう。

本書で気づかされたことが2点あった。
およそ300万年前のアウストラロピテクスから所謂原人が出現していることが判明しているが、
およそ80万年前より昔には管理された火を使った明らかな証拠がないことである。p85
つまり初期ヒト科の食べ物調理と捕食動物に対する日々の生活は、かなり厳しかったのであろうということの認識である。
関連して、
250年ほど前にリンネとほぼ同時代のサミュエル・ジョンソンが(中略)「ヒト」を「人の特性を持ったもの」、そして人を「人間」と定義p130
して判別するためには、原人:ヒトが進化して現代「人間」になったと呼べるのはどの時点か・・・を明確にする必要がある。
著者は、それは「象徴化」の有無にあると言う。
進化する脳内で、ある概念を抽象的に意識し予測することができたから、ラスコーやショーヴェ洞窟の絵画が描けたのだろう。
それらは現代でも十分通用する。