生命進化の偉大なる奇跡

著:アリス・ロバーツ
訳:斉藤 隆央
学研プラス(2017/11発売)
ISBN:9784054062788
著者の本は、2014年8月に「人類20万年遙かなる旅路」を紹介している。
本書の冒頭に、著者が実際に子を産んでヒトの発生を体感したことから、受精卵から順に身体の各部位の形成に見られる生命進化の歴史を解説した書物ができたことを明かす。
内容は、かなり専門的な叙述が多く、それを説明する図版はそれほど多くないので、結構難解なところも散見される。
この種の書籍に共通する、かのエルンスト・ヘッケルの約言「個体発生は系統発生を繰り返す」、即ち、「胚発生は進化の歴史を繰り返す」という文言にも触れられている。(p28)
これはよくある図版を過不足なく説明しているように受け取られ、ウケが良かったが、現代の遺伝学では、
胚は祖先の成体ではなく、祖先の胚のなごりが含まれている(中略)タイミングの変化と考え(p361)
と解釈するのが正しい。
別の用例説明では、
四肢動物の肢の先にある手や足は(中略)祖先の魚の鰭にすでにあったものが変化したのではなく、発生途中の肢の先端部でHox遺伝子がまったく違うパターンで発現した(p287)
とも語る。
興味深い内容として、
身体のさまざまな部位が同じ遺伝子によって制御されている(中略)だから、手や足の指に遺伝的な問題があると、生殖器も見なくてはなりません。欠陥がそこにも表れやすい(p171)
これは、ルイス・フロイスが叙述した豊臣秀吉は多指症だったという観察から、正室及び数多の側室には子が無かったという事実にも反映していると思われる。
秀頼のタネは誰が提供したのか?