文明の衝突

著:サミュエル・ハンチントン
訳:鈴木 主税
集英社:1998/6/26
ISBN:9784764736658

クリントン大統領時代の世界を概説した本。
世界の文化・文明が合い対峙するときには、葛藤が生じる。
人は自分が誰と異なっているかを知ってはじめて、またしばしば自分が誰と敵対しているかを知ってはじめて、自分が何者であるかを知るのである(p23)

特に宗教が絡むときに、理性では制御しがたい感情を伴う。
単なる宗教にとどまらず、生活の道そのものである。(中略)近代化を望んではいるが、かならずしも西欧化を目指してはいない。(p162)

文明間が対立すると紛争が発生する。
今後、危険な衝突が起こるとすれば、それは西欧の傲慢さ、イスラムの不寛容、そして中華文明固有の独断などが作用して起きるだろう。(p275)

当時の時世の中心であったボスニア問題を詳細に分析している。
p238の「西欧文明の東の境界」図版は、大変参考になる。さらに言えば、「トルコ~イラン周辺」の図版もつけてくれていたらより理解が深まったと思う。

書中、世界大戦の発生例として、2010年に中国がヴェトナムに攻め込む・・・というシナリオが紹介されている。幸いこれは外れたが、2020年の現在ポピュリズム信奉者が世界大国の指導者として権力を握っている。事実は、予想よりも先鋭化する・・・ということか。