古代文明に刻まれた宇宙

―天文考古学への招待-
著:ジューリオ・マリ
訳:上田 晴彦
青土社(2017/7)
興味をそそるキーワード「古代文明」「宇宙」「天文考古学」を持つ本書は、怪しい類の似非科学本ではない。
古代人を統率するために必要な宗教観・権力など文化人類学の観点から、夜に見える星々が如何に解釈されて表現されていったか・・・を解説している。
狩猟・採集文明と放牧・農耕文明についても、“どちらが優れている”という画一的な見地を脱した最新の知見から評価している。
新石器時代の遺跡ギョベクリ・テペ内の43番柱にあるレリーフに、古代の恒星の位置関係の解釈が成されているのが興味深い。p107
解釈といえば、イースター島のモアイ像の造形についても、採石場となったラノ・ララク火山の輪郭との相似を指摘している。p139

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このような指摘は、ジャレド・ダイアモンドの「文明崩壊」には言及がなかったので、些か驚いた。
また、古代インカ文明についても、
荷物を運ぶアンデスの大型動物であるラマは、荷車を引っ張ることには適しておらず人を乗せることも強く嫌がったp269
とある。このリャマの性向は、ウィキペディアにも無い内容である。