岩は嘘をつかない

―地質学が読み解くノアの洪水と地球の歴史-
著:デイヴィッド・R・モンゴメリー
訳:黒沢 令子
白揚社(2015/03発売)
ISBN:9784826901802
2017.02/10に紹介したアラン・カトラー著の「なぜ貝の化石が山頂に?」が本書の参考文献になっていた。
ということは、中世以降の"ノアの箱舟"に関わる問題を取り上げた本。
中東の一部族の信心の物語が名高い書物に集成されると、それが独り歩きして、確固たる権威をもつようになる。
幼少教育の効果は大きく、幼いころから聞かされて育つと、他の考え方に対する寛容性が失われる。
洪水伝説も唯一絶対の拠り所とされていたが、細部には論理的な破綻もある。
世界中で過去の遺跡が発掘され、過去の文字が解読された結果、かつてに人類が遭遇・経験したとされた洪水伝承は、結構地域的な規模のものが再々発生したことが分かってきた。
古代人の世界観からすれば、ローカル出水であっても、世界中が水浸し・・・のように思えたことだろう。
確かに一昔前には、放射性炭素年代測定とかプレートテクトニクス理論はなく、絶対年代決定とか地層がなぜ褶曲・逆転しているのかを説明することは難しかった。
それらの科学的な説明を得ることができる現代でも、創造論者は存在する。
その理由について著者は豊富な過去事例を(食傷気味・・・訳者後書きp302)になるほどとりあげていて、本書を読んでなぜそうなってしまうのかの一端が垣間見えた。
人間は、自分が信じようとすることのみを信じる性質がある・・・ということの反映である、ということだと解釈した。