進化は万能である

―人類・テクノロジー・宇宙の未来-
著:マット・リドレー
訳:大田 直子/鍛原 多惠子/柴田 裕之/吉田 三知世
早川書房文庫(2018/06)
前作「繁栄」や「やわらかな遺伝子」よりも、自然発生的な「進化」が広範に世の中に応用できるという内容を明らかにしようとした本。
空から物体を吊るしているとされる“スカイフック”という架空の装置。
それは、第一次世界大戦時に、同一箇所に1時間留まれと命じられたパイロットが、「本機はスカイフックに吊るされてなどはいない」と応じたことに発する。p19
言い方を変えると、
・高所からの説明・指示・統制・命令は、百害あって一利なし。
ボトムアップの試行錯誤・選択的持続性は、「進化」という概念で発展を遂げる。
ということを多くの例を引いて作者は述べる。
「テクノロジーの進化」では、多くの発明はほぼ時を同じくして成されたことを説明する。
英国のジョゼフ・スワンは、なんと米国のエディソンよりも早期に白熱電球を点灯させていたという。(著者は英国人)
一般的なねじ込み式の電球ソケットの「E××」のEはEdisonから由来していることは以前記したことがあるが、
豆電球等に見られるスナップ式のソケットを「スワン型」と何故呼ぶのかをここで知った。
「教育の進化」でも辛らつに、
「公教育の目的が啓蒙であることはまずない。それはできる限り大勢の国民を画一的で安全な型にはめ込み、標準的な国民を育てて意見の相違や独自性をなくすことにある」とH・L・メンケンは述べた。p269
と引用する。
トップダウンの組織にろくなものはない・・・という意味では大いに頷かされた。