キリン解剖記

著:郡司芽久
ナツメ社
発行:2019.07.04
ISBN:9784816366796
哺乳類は基本的に首の骨:頚椎の数は、7個で固定されている。
キリンの首は長いが、一本一本の骨長が長くなっている。
著者は、頚椎の背骨側に続く第一胸椎の可動性を検証し、あたかも8番目の頚椎のような役割を持っていることを発見した。
即ち、進化で首の可動範囲が拡大し、
・7個の頸椎:高所の葉を食べることができるが、低所の水は飲めない
・7個の頸椎プラス可動性ある胸椎:高所の葉を食べることができ、低所の水が飲める
ことを解明した。p177

キリンの解剖といえば、リチャード・ドーキンス
著書「進化の存在証明」で、哺乳類の頸には、喉頭神経の分枝の一本が真っ直ぐに喉頭に向かっているが、もう一本の喉頭神経(反回神経)は、脳から発し一旦胸まで来てから、心臓動脈を回り込んで上部に反転し喉頭に至るように、遠回りをして喉頭に至っていると紹介している。
一方、サメ類の喉頭神経はそれぞれが最短経路で結ばれている。
魚類からの進化の過程で神経経路をそのまま引きずってきたので、哺乳類:キリンの反回神経も長大となった。
ドーキンスは当該書内でそのことを確認するために、キリンの解剖に立ち会ったことを記している。
リチャード・ドーキンス氏に対しては、是非エイミーバレット氏と対談して、進化論とカソリックのそれぞれの見解を表明するよう求めたい。

本書の著者に対しては、(骨及び筋肉周りの専門家のようだが、)一般人には珍しい「キリンの解剖学者」さんとして、その反回神経周りのことにも触れてほしかったと述べたい。

本の「おわりに」で、博物館では無目的、無制限、無計画の三つの「無」が重要だと説く。
今は必要としなくても、100年後、誰かが必要とするかもしれない。p212
目先の権力の威光のみに腐心していると、歴史の審判に晒される・・・だろうということ。