悲しき熱帯

フランスの知識人の真髄を垣間見る修辞的な文章が連続する民族学旅行記
これを半年間で書き上げたレヴィ=ストロースの教養は深い。本書は、以後いわゆる「未開」文明調査に携わる方面の座右の書となったのではなかろうか。
内容が大変濃く、文中の語彙の豊富さに於ては、日本語訳に12年を要したのも宜なるかなとぞおもはゆる。
係り結びの用法解析においてなかなかに複雑の様相を呈し、一読その意を得ることはなはだ難と心得る。
一例
なぜなら、水がいかにも大々としてそこにあるということは、その存在が風景をしばしば峻厳な方向に変えるために、岸のこちら側でもありありと感じ取れるからだ。
(下巻234頁)
これは、原文フランス語を日本語訳するときの言語観の世界観の相違に立脚しているものと推察する。
西洋文明の観点から南米新世界を一方的に解釈することの誤謬性についての言及もあり、下記解釈も首肯くところである。
西洋社会における西洋中心主義に対する批判的意識:どのような民族においてもその民族独自の構造を持つもので、西洋側の構造でその他の構造に対して優劣をつけることなど無意味だと主張(Wikipedia
年明け肌寒く、じっくり本が読めた正月。
牛のキャラバンは、トローパと呼ばれる。(下巻111頁)