イチョウ奇跡の2億年史

−生き残った最古の樹木の物語-
著:ピーター・クレイン
訳:矢野 真千子
河出書房新社(2014/09発売)
ISBN:9784309253022
どこでも目にすることができ、秋には一斉に黄色に変化するイチョウは、いわゆる生きた化石に類する植物ということらしい。
地層年代的には、近縁の植物は三畳紀(2億年前)の化石から見つけられ、幾多の絶滅の危機に晒され、現世は中国の奥地でほそぼそと自生していて、中国から十五世紀頃日本に仏教からみで伝来した。(p234)
欧州には、長崎出島経由エンゲルベルト・ケンペルが紹介し、それ以降全世界に広まった。(p250)
イチョウの学名は、ギンコー・ビロバであるが、なぜそうなったかを書中で推理する。
当時日本では、「イチョウ」又は「ギンナン(銀杏)」と呼ばれていた。
たまたまケンペルが見たと思われる絵入り辞書に「ギンキョー」と載っており、それをケンペル出身のドイツ北部方言で表記すると"ginkgo"となり、それを知らぬ人が発音して、「ギンコー」となった・・・ということらしい。(p253〜254)
p258のペンシルヴェニア州Everettのイチョウに纏わる話は、
http://www.post-gazette.com/frontpage/2008/04/13/Town-rallies-to-save-old-ginkgo/stories/200804130165
にそのまま出ている。
背表紙、装丁もイチョウに関係した配色で、長田敏行東大名誉教授の解説も適切。
ありふれた街路樹としての公孫樹から、絶滅危惧種を考える、好著。