ヒトラーの科学者たち

著:ジョン・コーンウェル
訳:松宮 克昌
作品社(2015/04発売)
ISBN:9784861823565
科学的には素人同然の人物が権力を得ると、その取り巻き連中が群がって手近な甘い汁を吸う。
科学的には優れた人物でもその方向性を誤ると、非人道的な兵器を開発する。
前者は、ナチを頂点とする第二次世界大戦前のドイツ国内。
後者の代表としては、フリッツ・ハーバー。紙一重のところに、ヴェルナー・ハイゼンベルグ、フォン・ブラウンらがいる。
ハーバーは、空気中の窒素を分離する方法を発明し、安価で大量の肥料を製造する道を開いたが、同時に火薬の原料の大量生産にも繋がった。
当時の肥料は、トリの糞から得られる硝石から生産されていたが、ドイツは入手する道を絶たれていた。そこに(化学的に)窒素を含むアンモニアの国内プラントが可能になったことで、戦争に踏み切った面もある。
ハイゼンベルグは、原子爆弾の可能性に関わっていた。
フォン・ブラウンは、空飛ぶ爆弾V2号を手段にして、ロケット開発という目的に手を染めていた。
科学者は、生きるその時代の中で、自らの良心と対話しながら研究する宿命がある。
 
本書は、翻訳がいけていないところが多々ある。下記は一例。
設計者は克服できぬ性能的な問題を残したまま、それぞれのプロペラに双発エンジンを取り付けた。p292
600頁近い大著だが、折角の問題提起本が機械翻訳に頼って、もったいない。