なぜ貝の化石が山頂に?

―地球に歴史を与えた男ニコラウス・ステノ-
著:アラン・カトラー
訳:鈴木 豊雄
清流出版(2005/08発売)
ISBN:4-86029-116-6
宗教改革の嵐が欧州に吹いていた頃、どちらの宗派でも"ノアの箱舟"は、MUSTのイヴェントだった。
何故、山の上で貝殻化石が見つかるのか?・・・という疑問に答える拠り所が"ノアの箱舟"だった。
宗教の思想と現実を対比して、因習に囚われない普遍的な理論を開いた人物。
その人物以前の人々にとっては、山に登ったとき目の前には地層はなかった。
初めて疑問に思い、地層構造断面図を出版した人物。
それが、ニコラウス・ステノ。
自身は、デンマーク人で、イタリアに渡りカトリックに改宗した宗教者である。
著書では、宗教の考え方に折り合いをつけた表現をして、当時の教会からは排斥されていない。
当時の人々は山の上の貝殻化石の存在を説明するため、山の上で貝殻化石は"岩のまま"成長する・・・とまで説明することもあった。
今では層準の理論は当たり前で、小学校から学ぶ。
その「当たり前」に「行きつく前」では、地層は目の前にあっても、著者以前の人々には見えなかった。
意識されないものは見えない。
現代・・・そのようなものはないだろうか・・・明らかにもう、在る。
が、それが意識されていないため、見えない。
それが意識できて見える少数の人々は、差別され排斥される。
1988年、ニコラ・ステノは聖人に加えられた。歴史が評価したのだ。
裸の王様には、「あなたははだかですよ。」と素直に言える感性を持ちたい。