ノアの洪水

著:ウィリアム・ライアン、ウォルター・ピットマン
訳:戸田 裕之
監修:川上 紳一
集英社(2003/08発売)
ISBN:9784087733938
旧約聖書の『創世記』で、大洪水にまつわる、ノアの方舟物語が語られている。
聖書は神の創りたもうたものと見なす英国国教会の教え(p28)
であるが、
神が著したはずの侵すべからざる聖書のなこの洪水の物語が、もっと古い、異種族の神話に記録され(p29)
ていることに、ヘンリー・ローリンソンの部下のジョージ・スミスが1872年、古代ペルシャギルガメシュ楔形文字解読中に気づいた。
本書は、海洋地質学者の2名が、上記の内容を現代的な観点から展開し、推理した本である。
大洪水の記憶は、被った人々間で伝説化する。
伝承される中で、話が肥大化、選民化、神聖化された状態で、吟遊詩人らによって地域拡散され、現在のパレスチナ地方の宗教の一宗派の伝説に取り込まれたのではないかと、著者は推定する。
具体的には、紀元前に一時期干上がっていた黒海に地中海から海水がボスポラス海峡から怒涛の如く流入したことがあり、その事象に遭遇した人々の記憶だと説く。
本書の主張は定説ではなく一説の提議であり、解説の部分で反対意見があることも注釈されている。
学者が自説喧伝のために書いた本なので、冗長で読みにくいところが多々ある。
物の見方を考えるヒントにはなった。