道徳性の起源

ボノボが教えてくれること-
著:フランス・ドゥ・ヴァール
訳:柴田 裕之
紀伊國屋書店(2014/11)
ISBN:9784314011259
チンパンジーに似ているが別種であるボノボを通して、動物の道徳性ひいては宗教観までを論じた本。
私たちは相変わらず社会における宗教の位置を巡る議論の渦中にある。(中略)聖書の記述を文字通り信じる根本主義キリスト教と科学とが現在繰り広げている闘いが、証拠によって決着するとは一瞬たりとも思ってはならない。根本主義者はそもそもデータなど歯牙にもかけないから進化論を信じない。(p8)
現在の宗教が現れたのは、(中略)たかだか2000年ほど前にすぎず、生物学者にすればその程度の年数など物の数に入らない。(p9)
私が人とつき合うときには、相手に信仰があろうとなかろうと、今はその人がいったい何を信じているかではなく、どれだけ教条主義的なのかで明確に境界線を引く。(p110)
人々はただ信じたいから信じるのだ。これはすべての宗教に当てはまる。(p126)
科学とは、たとえ足を引っ張る人がいても全体が進歩するのを可能にする行動基準を持った、集団的な事業なのだ。(p131)
宗教は「超自然的なもの、神聖なもの、あるいは霊的なものに対して共有される畏敬の念であるとともに、そうしたものと結びついた象徴や儀式、礼拝でもある」。(p266)
これまで何世紀もの間に蓄積された反宗教の議論がある。(中略)ドーキンスの「妄想」はフロイトの「幻想」とさして変わらない。(p275-276)・・・一刀両断!
ボノボ等の動物には“宗教”はないが、明確な規範・道徳性があり、それが宗教に繋がっていると著者は記す。