火星の人類学者

─脳神経科医と7人の奇妙な患者-
著:オリヴァー・サックス
訳:吉田 利子
ハヤカワ文庫
ISBN-10415050251X
表題の「火星の人類学者」とは、自らを説明する自閉症の動物学者:テンプル・グランディンの言葉。
このエピソードの他、
・脳神経医の著者が会った全色覚異常の画家
・短期記憶が保てない宗教解脱者
・激しいチックを起こしながら巧みに執刀するトゥレット症候群の外科医
・視力を回復しても視野が理解できない視覚失認症の牧師
・幼い頃を過ごしたのイタリアの田舎の風景ばかりを描く人
・一目だけでパノラマ絵が描けるサヴァン
等著者が会った人々が描かれる。
普通にこれらの人々は、通常の生活者からはかけ離され、居場所がなくなるものだが、その特別の面を見出す人に恵まれ、世の中から傑出者として評価されている。
以前の著書「妻を帽子とまちがえた男」では、脳神経科医が見た特別の患者としての立場が多く見られるが、本書は人間の脳働きの普遍性に迫り、普通人の脳の働きの振れの範囲において、自分の考え方・行動の仕方との差異を見直す点で大変優れている。