千の顔をもつ英雄

著:ジョーゼフ・キャンベル
訳:倉田 真木、斎藤 静代、関根 光宏
ハヤカワ文庫 NF(2015/12)
ISBN:9784150504526/9784150504533
人類が古代からその自己統一性(アイデンティティ)として口承してきた、神話。
著者は、その神話を世界中から収集し、一貫したパターン:出立→通過儀礼→戦闘→勝利→帰還
という共通性を見出した。
その黄金律は、現代映画:スターウォーズにも反映されるほど、人間の奥底に伏流する普遍性に訴えかけるものがある。

古今、文化があるところに神話があると思われ、本書に引っかからなかった内容も多々あるとは思うが、フロイト(好色な心:上巻p265)やユング(集合的無意識)らの精神分析論を用いて、神話の本質を説明する。

原著は、1949年でいささか古典に類する内容である。
現代の脳神経外科医:オリヴァー・サックスとか動物学者:ライアル・ワトソンらが記しているように、「側頭葉てんかん」保持者特有の“宗教的意識”発生の観点からも「神話発生」の秘密が解明されるのではないか・・・とも思う。

書中“暴君”に対する記載がある。少々長いが引用(上巻p33)
暴君の大きく膨らんだエゴは、周囲の事柄がうまくいっているように見えても、当人やその住む世界にとっては災いである。暴君は自ら怯え、恐怖に取り憑かれ、周囲からの予想される攻撃―主に自分が抱えるものに対する抑えられない衝動が投影されただけなのだが―に立ち向かうためにあらゆる手段を講じようと構えるので、心の中では人間らしい意図を持ってひとり満足していても、世界に大惨事をもたらす使者になる。