言語が違えば、世界も違って見えるわけ

著:ガイ・ドイッチャー
訳:椋田 直子
ハヤカワ文庫NF(2022年3月)
ISBN:9784150505868
イギリスの政治家ウィリアム・グラッドストンは、ホメロスおたくで、
ホメロスおよびホメロスの時代研究」の著者である。このことはウィキペディアには記されていない。
彼が、その古代名著を徹底分析して結果:色の描写はどこか決定的におかしい。という結論(p66)に達した。
例えば、海と牛がともに「葡萄酒色」と表現され、「青」は一切出てこない。
古代ギリシア人は世界がモノクロに見えていた?
・そのような色名の差異は、色彩知覚の差異から生じていたのか?
・当時人類の色感は未進化だった?

本書は、異なる言語の話し手が、それぞれの母語のあり方ゆえに、同じ一つの現実を違うやり方で知覚することがありうる(p359)
ことを述べた本。
私たちがたまたま話すことになっている言語は、私たちが理解できる概念の限界を決める牢獄(p247)
ということ。

人類の進化速度からは、古代ギリシア人の目に入る色彩は現代人の目に入る色彩とは変化は考えられず、(グラッドストンの解釈とは逆に、)言語の差異が知覚の差異の原因・・・であったことを縷々述べる。

日本の“青信号色”について、(CIE1931年色度図上の色空間として)1973年に、緑の範囲内でありながら、できるかぎり青に近い色合いを「アオ信号」として選んだ・・・ことに言及している。(p358)