科学の発見

著:スティーヴン・ワインバーグ
訳:赤根 洋子
解説:大栗 博司
文藝春秋(2016/05発売)
1979年ノーベル物理学賞を受賞者が著した「後出しジャンケン科学史
古代ギリシアデモクリトスは「原子論」を唱えたとされているが、著者にかかれば、
現存する彼の著作の断片には、物質が本当にアトムでできていることを証明しようとした跡はどこにも見られない。p30
と切って捨てる。さらに、
ギリシャの思想家たちを理解するには、彼らを物理学者や科学者だと考えないほうがいいように思われる。(中略)詩人と見なされるべき存在である。p31
とも言う。
天動説から地動説へ天文学が遷移した歴史においても、現実を説明するための「ファイン・チューニング」を多々取り込まなければならなかったコテコテ理論から、すっきりとしたニュートン力学への段階を、現在の評価を取り入れた描写は新鮮だった。
ルネ・デカルトにおいては、
見解には間違いが多すぎるp266
と、現在の視点からばっさり裁断されている。
現代の科学は、理論と再現性ある実験から得られた評価の両輪で構築されていることを知る好著。