科学と宗教

−合理的自然観のパラドクス-
著:J.H.ブルック
訳:田中 靖夫
工作舎(2005/12)
宗教は、人間が社会を形成した際には、もう、ヒエラルキを安定させるものとして作られてきた。
中東地方の一部族で編み出された選民思想をもとにした考え方は、詩文、民話、神話の盛り込まれた書物として集成された。
それは、ある時期固定された解釈として人々の桎梏ともなった。
一方で、自然界を観察し理解しようとした人々は、分かりやすい天動説から分かりにくい地動説の方が正しいと唱えた。
統一的な考え方も内部改革の機会があったが、重力を定義した人物はある意味宗教のとりこだった。
やがてダーウィンが進化論を発表し、人間の尊厳は地に堕ちてしまった。
現代は多様な価値観の基に、
科学的な規範よりもむしろ近代医学からの恩恵、都市生活の慰安、経済の繁栄に負う点が多いと考えられ p366
原理主義的宗教が大衆受けするのは、ますます不確かで不穏になってゆく現代世界において、確実で保障された科学観を提供してくれるからである。p370
というふうに理解した。