悪霊にさいなまれる世界

−「知の闇を照らす灯」としての科学-
著:カール・セーガン
訳:青木 薫
早川書房(2009/07発売)
ISBN:9784150503567/9784150503574
本書は1996年に亡くなったカール・セーガン博士が最後の著作。
著者が、幼少の頃家族から科学に対するものの考え方を学んだエピソードから入り、人間の科学に対する向き合い方について鋭く警鐘を鳴らした本。
我々が何気なく口にする言葉の中に、なぜ迷信の類のようなものが紛れ込むか・・・
星座運勢、バイオリズム、血液型、お札、お参り、ご祈祷等々・・・
他人に判断を任せる:自分で考えないことの危険性をいろいろな角度から、やや饒舌と思える位、古今の著作物を引用して訴える。
人間が間違えるものだという前提に立って、「科学」手法をもってすれば、他のモノよりましな解決策が得られることを述べる。
ひとつのエピソードとして照会されているもののなかで気を引いたものがあった。
エンペドクレス(エンペクレドスではない)の
「クレプシドラの実験「(本質的に、ストローの一端を指で押さえて垂直に水に入れるようなもの)で空気は物質だということを明らかにした。下巻p174
古代ギリシア時代に、「なぜ空気は物質だと分かったのか」答えが科学的に実験されていたのだ。
簡単に本質を突いた、鮮やかな実験と言えよう。
 
第3代アメリカ合衆国大統領トマス・ジェファーソンは、
「少しの秩序を手に入れるために、少しの自由を手放そうとする社会は、そのどちらをも失うことになるでしょう。それに、そんな社会は、秩序にも自由にも値しないのです」下巻p389
と述べている。昨今話題の共謀罪に関連して、提起しておきたい。