―「恐怖」を操る論理-
著:ダン・ガードナー
訳:田淵 健太
早川書房 (2009/05/25 出版)
ISBN: 9784152090362
現代の人間は、約8万5千年前、アフリカとアラビア半島南端のバベルマンデブ海峡を約150人程度の集団で、1回だけ渡った人々の子孫の基本デザインに拠っている。
その人間が考えるシステムはふたつある。
システム・ワン:脳幹部分により近い箇所で行われる、直感的・素早い・感情的な「腹」
システム・ツー:大脳皮質周辺部で行われる、計算的・時間がかかる・理性的な「頭」
そのシステムの相互作用で、現在の人類の文化及び行動がなされている。
あることがらのリスクが如何程のものかについてを判定するのは、石器時代と同じ能力の脳であり、自分自身の経験と自分の回りで起きていることだけの材料でそれをおこなう。
化学物質が人工の科学物質を意味し、人工の化学物質は危険と決めつけている文化(p368)がある。
大元は、レイチェル・カーソンの「沈黙の春」である。(p334)
そこではDDT等の人工化学物質が危険とあった。しかし、その本では喫煙の悪影響については一言も言及がなかった。「タバコは自然界に存在するもので安全である」という理由で。(p338)
「すべての物質は毒である。毒でないものは存在しない」(p343)
このことにより所謂「予防原則」は意味を成さない。(p363)
「腹」に訴えかける商業主義の産物は、数多く存在する。
「頭」で、リスクを受け入れた生活をすることが必要である。