格差の起源

―なぜ人類は繁栄し、不平等が生まれたのか-
著:オデッド・ガロー
監訳:柴田 裕之
訳:森内 薫
NHK出版(2022年09月)
ISBN:9784140819111
本件については、ジャレド・ダイヤモンド等の既著が概略を示しているので、何か新しい切り口があるのか・・・と思い、読んだ。
狩猟採集民から農耕民への社会転換は、生活水準低下を齎したことも、ユヴァル・ノア・ハラリが指摘している(p47)

では何故人類はマルサスの桎梏から逃れ得たのか?
産業革命を嚆矢とする相転移が主因であると著者は述べる。
収奪的な政治制度から私有財産尊重等を基準にした個人主義への転換がそれを果たした。個人の創意工夫を尊重した例と言えば、全世界共通輸送用コンテナ(p137)が挙げられよう。
これにより輸送コストは激減し、沖仲仕は失業した。

疑問に思うのは、非民主的な体制の国でも経済成長した(p180)とあるが、結果を述べているが理由が無い(と思う)

停滞する文化が存在する理由は、
自分たちの規範こそが遍く妥当であるという間違った、時に有害ですらある確信だ。このように思い込む傾向は、多くの社会で人種差別という文化的特性が現れる一因ともなった(p207)
との指摘は、核心をついている。