反穀物の人類史

―国家誕生のディープヒストリー-
著:ジェームズ・C・スコット
訳:立木 勝
みすず書房(2019.12)
ISBN:9784622088653
原題:Against the grain 2017
著者は「ホモ・サピエンスは、農耕生活を待ちかねたように腰を落ち着けて永住し、数十万年におよぶ移動生活を喜んで終わらせた」のではないと論じる。

古代メソポタミアを主に例にとり、
初期国家が創設されたのは、作物栽培と定住が始まってから4000年以上も後。だったこと(p5)の謎解きから始める。
即ち、国家をもたない人びとの歴史(p14)でもある。

「国家」とは、税の査定と徴収を専門に行う役人を例に階層的な階級社会での行政権力行使(p111)としている。
そのような堅苦しい制度を嫌だと思う人びとは多く、簡単に権力が及ばない外縁に逃げることができた。

ユヴァル・ノア・ハラリも「サピエンス全史」で、農耕定住生活:国家臣民生活は不栄養・桎梏生活だったと述べている。

言わば、人類の進歩は内面に「必要悪」を抱えながら為されてきたことを解き明かした本。

旧世界人がアメリカ(新世界)に浸出した時、疫病を持ち込んだ結果、北アメリカで先住民の手で従来行われてきた森林焼き畑農業が停止した。
結果、森林被覆が野放図に広まり、二酸化炭素が減少し1500~1850年頃の小氷河期が現出した。(p37)というのは新たな視点。