鉄道の現場

鉄道の現場にいた頃の話である。
新幹線列車無線設備の現場保守に携わっていた。
数十キロ毎に基地局を設置し、車上(新幹線)移動機と無線通信を行うシステムなのだが、トンネル内には電波が侵入しないので、漏洩同軸ケーブルをトンネル内壁面上方に這わせて、「トンネル対策」を実施していた。
電波は放射減衰するので、数キロ毎にトンネル内機材坑に中継器が設置されていた。
年2回、2月と8月に、六甲トンネル、新神戸トンネル内に予防保全措置として「切替警報動作試験」を実施するために、営業時間終了後の深夜、そのトンネル内に入るのである。
トンネル内上下線の間に保守通路があり、作業時間帯になると、柵内立入が可能になる。
手段は、ホンダ・モンキー。
工具・測定器を担いで、保守通路を爆走する。
機材坑すべてに中継器があるわけではないので、かなり走る。
目標は、漏洩同軸ケーブル。中継器がある場所で機材坑に降りているのである。
湿った坑内の香りと排ガスの匂い、トンネル内に反響する騒音と保守用車接近警報音。
一度、ガソリン残量チェックを欠かしたため、途中でガス欠し、更にパンクもしていて、自由にならないと結構重い単車を押して、新神戸駅まで帰った苦い思い出。
今としたら、懐かしい思い出だ。