コロンブス航海誌

『完訳 コロンブス航海誌』
編訳:青木康征
平凡社(1993/09)
ISBN-10: 4582481124
ISBN-13: 978-4582481129
世界史の中での扱いは、1492年にサン・サルヴァドル島に上陸し大航海時代の先鞭をつけた。
ということになっている。
「インディアス」に到達した栄光を背負って開催された式典の席上で披露されたと言われているのが、有名な「コロンブスの卵」である。
曰く、後から誰でもできるようなことを最初にする、ということには発想の転換を要する、ということである。
新大陸ジパングは、板子一枚あれば容易に川から黄金が採取でき、香辛料はすべて海辺にあり船に積み込むだけでよい、との触れ込みでヨーロッパ王室に売り込みをはかり、エスパーニャ(スペイン)のイザベラ女王からの資金援助を得て、大西洋に乗り出した。
航海日誌は、後日報告されるであろうことを意識して、如何にかの地が黄金に満ち、たやすく得られるかのように、記されている箇所が多くある。
もちろん、実際に到達したのは、西インド諸島であり、そこは黄金の国ではなかった。
王家との契約で、個人的な権威と利益は得ていたが、実際の差異は大きかった。
何と言っても、現地には既に「人」がいた。
西欧文明の功罪である。
人間が暮らす:そこには文化が存在する、のではあるが、鉄と宗教を携えた文明の前には当時の社会が耐えられるはずもなかった。
コロンブスは、新大陸を個人の蓄財に利用しようとした方向性が強く、キューバ島までで踵を返してる。
冒険家としての道を追求し、もうすこし北に進めば、フロリダ半島:本当の新大陸、に到達できた可能性がある。
その時代、世界地図が盛んに発行される過程で、アメリゴ・ベスプッチがなぜか滑り込み、Americaになってしまったのである。