海に眠る船

コロンブス大航海の謎-
著:クラウス・ブリングボイマー、クレメンス・ヘーゲス
訳:シドラ 房子
2006/5/25ランダムハウス講談社
コロンブス船隊の一隻と思われる沈没船の発見に纏わる現代の物語と、クリストファー・コロンブス自身の伝記及び当時の世界情勢を解説した本。
船乗りとしては優秀だが、他のところは問題が多かったらしいコロンブスだが、大言壮語を擁して新大陸の端に纏わる諸島まで行き着いた。
地球は球体であることのおぼろげな総意は、そろそろでき上がっていた時代で、あとは「誰が」行くか?
というところに当たったのが「コロンブス」だった。
本人は、至って権勢欲が強く、それが災いして新大陸競争から取り残され、名称もアメリゴ・ヴェスプッチに攫われてコロンビア大陸にはならなかった。
目的としていたジパング到達・黄金の夢は破れ、新大陸には混乱を齎し、新大陸からタバコ、性病を持ち帰る等、毀誉褒貶の波に揉まれたコロンブスではあるが、
当人でなくても、多かれ少なかれ異文化が遭遇する場におこる場面においては避けえない事態であり、正しくジャレド・ダイヤモンドの「銃・病原菌・鉄」の描写に即することが行われたと思う。
発見者・引上者・国当局が動かず、結局、本書中では沈没船の解明には至らなかった。
引き上げ物を抱え込まず、公にすれば、観光業が拡大し、長い目で見れば、悪い話ではないと思うのだが・・・