ダ・ヴィンチの二枚貝

副題-進化論と人文科学のはざまで-
著:スティーヴン・ジェイ・グールド
訳:渡辺 政隆
早川書房 (2002/03/31 出版)
ISBN:(上巻)4152083964、(下巻)4152083972
マラケシュの贋化石」と同じく、未読であった本。
ルネサンスの天才といえば、レオナルド・ダ・ヴィンチである。
比類なき芸術家であるが、その彼とて、当時の物の見方に支配されていた。
現代では、「水」の循環(山に雨が降り、川となって海に注ぎ、蒸発し、また雨が降る)は常識である。
しかし、当時「水蒸気」の概念が無く、彼は何故山から水が流れてくるか・・・は分からなかった。
彼は、地球内に見えない川があり上流に登ると手稿に記し、説明図まで記していた。
 
また、進化論説明でほとんどの教科書にある「キリンの首が長くなった理由」、は実は「種の起源」でダーウィンはしていない。
 
さらに、不思議の国のアリスで有名なドードー鳥は、完全な剥製資料が作られる暇も無く急速に絶滅した等、薀蓄満載である。
従来の定説に鋭い切り込みをするこれだけの内容濃いものを産み出せる理由は、彼がかなりの当時の資料を手許において(孫引きでない)書くことができる環境が大きいと思う。
西欧圏の資料(特にラテン語!)を渉猟できる立場、かつそれを咀嚼し再生産する能力は、並ではない。