ニュートンの時計

−太陽系のなかのカオス-
著:アイバース・ピーターソン
訳:野本陽代
日経サイエンス1995年5月25日
ISBN:978-4-532-52044-1
16世紀の末、アイザック・ニュートンは、万有引力を「発見」した。
これを元にラプラスは、古典物理学の名言
「もしもある瞬間における全ての物質の力学的状態と力を知ることができ、かつもしもそれらのデータを解析できるだけの能力の知性が存在するとすれば、この知性にとっては、不確実なことは何もなくなり、その目には未来も(過去同様に)全て見えているであろう。」
と主張した。
これは現代では、量子力学において、微小レベルの確率的な原子のふるまいから、否定されている。
上記はミクロレベルなのだが、太陽系の惑星の軌道におけるマクロレベルで、その軌道が惑星間の引力によって擾乱され軌道外の放り出されたり、小惑星が地球上に落下するカスタトロフィが発生する「カオス」が発生する可能性を論じている。
結論は、過去にはそのようなことがあったかも知れないが、現在の軌道はほぼ安定している。しかしカオス状態に遷移する可能性は否めない・・・というもの。
理論から導かれる周期からずれる実際の惑星の運動を数値化することに精力を注いだ天文学者となぜずれるかを追求した科学者の歴史はなかなか興味深かった。
書中、翻訳者の苦労が伺えるような、もって回ったような言い回しが散見され、その部分は些か眠気を生じたことを告白する。