日本人の宇宙観

−飛鳥から現代まで-
著:荒川紘
紀伊国屋書店(2001/10)
ISBN:9784314009010
飛鳥時代日本書紀の天体観測記事から、現代のビッグバンまでの日本人にどのように宇宙観が紹介されているかを説明している本。
日食や彗星の出現等よほどの天文事象でない限り、文献には記載されなかった。
日本は気候的に湿潤なことから、雲の影響で毎夜の天体観測は適わず、一般的人的にも野原に仰向けになった羊飼いが暇つぶしに星座を構成するようなことななかった、と思う。
そもそも野原・平原の類は少なく、田・畑で横たわると泥だらけになるのだから。
やがて仏教が伝来すると、その宇宙観が導入される。曰く、須弥山・曼荼羅
そこに、キリスト教が布教される。それは、天動説という当時最新の天体運行情報であった。
仏教は、平面大地説であったのに対し、球形の大地が中空に浮かぶ・・・
では何故物はぶっ飛ばないのか? 地球の裏側の人はどうなっているのか?
という素朴な疑問に対しての理路整然として回答は、なされなかった。
一方、キリスト教にしても、何故教えと違い世の中に苦しみは尽きないのか、そもそも神はアダムをイブが唆しを受けたときになぜ加護しなかったのか・・・という批判を当時から受けていた。
ニュートン力学宇宙論は、1802年に紹介された。(p213)
慣性の法則万有引力という概念の導入で、素朴な疑問が氷解したのだった。
著者は、日本人自然に対する考え方は、小社会的な人間関係に関連するものに留まり、科学的に解明された論理感に沿っていないと説く。
全く同感である。