船がゆく

キャプテン・クック支配の航跡-
著:多木 浩二
新書館 (1998/12/10 出版)
ISBN: 9784403120046
英国の18世紀の探検航海で有名なクック船長がエンデヴァー号で二回目に実施した航海。
それに乗り組んだ人々のいきさつから、彼らが南太平洋で出会った人々を記録に留めた内容を解説した本。
キャプテン・クックの第一回目の航海は、英国の上流階級の人々が同乗したが、第二回目は市民階級の人々が主流となった。
特に画家のホッジスは、当時の英国社会の桎梏から逃れられないものの、南太平洋の光と風と人に直に触れた結果、新たな表現手法に一歩踏み出すような写真的な内容を描いた。
帰国後の作品は、旧来の表現手法に再び取り込まれている。
船団の人々は、訪れた先を「未開」と決めつけていたが、実際には彼らの理解を超えるような「文化」を諸島の人々は持っていた。
クック船長らの先発隊のあと、宣教師らが続々と押し寄せて、元の文化を蹂躙した歴史がある。
 
この航海で、イースター島を訪れている。
そのとき既に、かの島は巨像のみ残る不毛の島の姿であった。
当時はその理由を思索することもなく、乏しい食糧、質の悪い水等、寄港地としては条件が悪かったことから早々に発っている。
なぜその島がそのようななってしまったのかは、かのジャレド・ダイヤモンドが「文明崩壊」で、「森林破壊」という答えを与えている。
更に言うと、「銃・病原菌・鉄」で、彼はなぜ先進文明が生じ、未開文明はそのままに留まってしまったかを明快に説いている。