ガリレオの指

―現代科学を動かす10大理論-
著:ピーター・アトキンス
訳:斉藤 隆央
早川書房 (2004/12/31 出版)
ISBN: 9784152086129
過去の科学以前の時代から現代更には未来に至る科学全体を俯瞰しようとした本。
著者は大変博識な方である。
 
かのガリレオ・ガリレイ本人の右手の中指が、フィレンツェ科学史博物館にある。
1737年に亡骸が改葬されたときに遺体から切り取られたという。
容器には、
「この指の遺物を軽んじてはならない。この右手が
 天空の軌道を調べ、それまで見えなかった天体を
 人々に対して明らかにした。もろいガラスの小さないかけらを作ることで、
 太古の昔に若き巨人たちの力をもってしてもできなかった偉業を
 大胆にも初めてしてのけたのだ。巨人たちは、天の高みに登ろうと
 山々を高く積み上げたものの、空しく終わっていたのである。」
という(本書、プロローグ)
「ガラスの小さなかけら」とは、彼が製作した天体望遠鏡のことである。
「巨人云々」とは、オッサ山の上にペリオン山を積み上げ、星々をもっと間近に見ようとした故事を指す。
ただの人間が作った望遠鏡の方が、神々よりも星を引き寄せて見ることができた。
だから、ガリレオの指は、頭が力に勝ることを象徴しているのだ。(p293)
 
アインシュタインの有名な公式「質量=エネルギー」を敷衍して時空変換を実施すると、地球の質量は4.41mm、太陽の質量は1.48kmになるそうだ(p366)
 
著者の思い違いは訳注で適宜補完されているが、
「地球の潮汐効果は、かなり硬い月の球形をおよそ1kmもゆがませる」(p329)
とあるのは、
http://www.astroarts.co.jp/news/2002/02/21nao526/index-j.shtml
によると、10cmとあるので、訳注漏れであろうと思う。