「イザベラ・バード」本、二冊

一冊目
イザベラ・バ−ド紀行 ― 『日本奥地紀行』の謎を読む
伊藤孝博
無明舎出版 (2010/08 出版)
ISBN: 9784895445139
 
二冊目
イザベラ・バードを歩く―『日本奥地紀行』130年後の記憶
釜澤 克彦
彩流社 (2009/06/30 出版)
ISBN: 9784779114328
 
いずれも、明治時代に東北地方から北海道にかけてを旅行したイギリス女性の旅行記に関する本である。
最初の本は、旅程を分析する視点から、足取りを再構築している。
それによると、旅行記に著されている日程にしばしば矛盾があるとのことで、当時の各地の状況から日時を較正している。
特に出色なのは、明治11年7月30日早朝に秋田県大館市白沢で遭遇した日食である。
その状況を「暗黒の思い帳が一切のものを不気味な薄闇に包み込んだ」(p235)
と記している。
現実に発生した天文事象に気付いた冷静な観点を持つ英国女性の面目躍如と言うべきであるところを、著者がNASAのサイトを引いて紹介している正確さが伺える。
 
二冊目は、彼女の旅行先の現在の姿を訪ね、写真に納めた本。
著者は研究者ではないが、撮影されたものが出版によって公開されたことは真に意義深い。
特に旅程の概略地図があるため、紀行の内容咀嚼が進む。これは一冊目にはない良い点である。
 
両冊とも、高梨健吉氏訳では情報がなかった「イトー」が「伊藤鶴吉」氏であることがその後の研究で判明していることに触れており、まことに興味深い。