月面に立った男

―ある宇宙飛行士の回想-
著:ジーン・サーナン
訳:浅沼 昭子
飛鳥新社(2000/09発売)
ISBN:9784870314368
宇宙飛行士、ユージン・サーナン:通称ジーン・サーナン氏が著した本。
著者は、生まれて育った環境・時期に本人の適性・努力も加味され、現在の歴史上では一番最後に月面から去っている。
原題は、The Last Man on the Moonで、直訳の「月面上最後の男」の方が、アポロ計画最後のアポロ17号の意が通じてよかったと思う。
「月面に立った男」自体は、12人いるのだから・・・
また、宇宙飛行士の「通称」は、ヴァージル・グリソム:ガス・グリソム、エドウィン・オルドリン:バズ・オルドリン等、外にもあるようだ。
この本は、本人のフリートークNYタイムズドン・デイヴィスが文字起しをしたような経過らしいが、中身は大変濃い。
それぞれの成長(?)に併せて時代背景が適切に記述されていて著者(ライター)の気配りとともに当時を思い出すよすがとなっている。
とかくこの種の本は、自慢話に終始することが多いが、訓練期間中の家庭との関係の苦い反省や、個人的な身体(前立腺)の問題、ヘリコプタ墜落の原因、出発直前のアキレス腱の損傷等ネガティヴな内容も隠さず述べる著者の性格が伺えて興味深い。
生命体皆無の月及びその周辺から、生命に溢れる地球を眺めた経験を持つ宇宙飛行士は、一種の宗教的な体験をから、「神」を引き合いに出すというが、著者もその例に漏れない。
一旦読みだすと、やめられなくなり、一気に読んでしまう類の本であった。
一点だけ、
アポロ17号が打ち上げられたのは、
午前0時33分であって、
午前12時33分ではない。p322