一四一七年、その一冊がすべてを変えた

著:スティーヴン・グリーンブラット
訳:河野純治
柏書房 (2012/11/1)
原題:“The Swerve: How the World Became Modern”・・・「急速逸脱:いかにして世界は近代化したか」
古代ギリシアでは、数多くの考え方を抑圧を受けずに著すことができた。
デモクリトスに始まった「原子論」は、エピクロスに引き継がれ、ルクレティウスによって、「世界は、それ以上分割できない粒子である原子と空虚から成り立つ」とする内容が、『事物の本性について』という詩作によってまとめられた。
当時、紙はなく、羊皮紙に手書きされた写本は長らく歴史と地誌の片隅に忘れられていた。
著者は、その写本が、イタリア人の文主義者ポッジョ・ブラッチョリーニによって、1417年にドイツの修道院で発見され、再度の写本化により、丁度勃興したルネサンス期の思想に大きな影響を与えたことを、説明する。
文明的にギリシアを引き継いだローマ時代、何の因果か中東の一神教を取り入れたために、人々は抑圧的な生活を余儀なくされた。
著者は、そのあたりの人々の生活と発見者ポッジョの人生とを織り交ぜて、神の存在に関するルクレティウスの独創的な見解の解説を行う。
日常的な視点からは、微細なもの:元素にまで思いを馳せることは、よほどの発想の転換が必要だと思うが、当時は実験的な再現性ができないままの思想に留まらざるを得なかったので、ある程度時代が下るまでは、一般的にはならなかった。
しかし、現代でも駅前で冊子を提示している人々が存在しているとは・・・