世界の起源

―人類を決定づけた地球の歴史-
著:ルイス・ダートネル
訳:東郷 えりか
河出書房新社(2019/11発売)
ISBN:9784309254029
地球の歴史を語る本は数多く上梓されていて、新たな切り口を訴求しない限りなかなか出版されにくいのではないかと思っている。
本書は、歴史に地理を組み合わせて、おや?、と思わせる内容を盛り込んでいる。
語り口は、とつとつとして、目が文字の表層を撫でるだけで、中身が入り込んでこない箇所も見受けられた。

米国南部地域にある白亜紀の岩帯の肥沃な土壌地域にアフリカ系アメリカ人が多い(p135)・・・というのは、もうすこし裏取りが必要ではなかろうか。

鉄を精錬するために(中略)塊鉄路から取り出し錬鉄として分離させる「ロート、wrought」はワーク[work、働く]という動詞の古い過去分詞系(p175)
は、workの語源を簡単に検索した限りでは言及されているものは目に付かなかった。

コロンブスが、仮にポルトガルから出航していたら、中継地にアゾレス諸島を選択し、その結果(逆風により)海の藻屑となっていただろう(p236)
は新たな知見であろう。

石炭紀に何故多量の木材が腐敗分解せず石炭化したか・・・について、ウィキペディアでは、
石炭紀には木材のリグニンを分解できる菌類が十分に進化しておらず[2][3]森林の繁栄により大量の炭素が石炭として固定化され」
とあるが、本書では大陸移動による気温・水位変動が引き起こした地質学的事情にあり、このため石炭は、石灰石、鉄鉱石と共に英国の産業革命のために準備されていたと言っても過言ではない(p276)
と見るのは、慧眼。