世界史の発明

著:タミム・アンサーリー 
訳:花田 知恵 
河出書房新社(2021.10)
ISBN:978-4-309-22832-7
教科書の「世界史」では、ある地域の歴史を順次述べた後、また違う地域の歴史を(やや遡って)順次述べる・・・という形式となっている。
主に、その時代の覇者の変遷が主となっていて、〇〇が繁栄して爛熟期に隣接の△△が侵入し征服して□□政権を拓いた・・・という内容で、その時々の文化描写が修飾記述されている。

本書は、切り口を変えて、各文明間の相互の影響性を主眼に世界史を著し、かつ今後我々は如何に生きるべきかを提言している。
叙述のキーワードとして、
・ナラティブ:各々の人々間に共通する物語
・星座:その時々の人間が見て知って認識しているもの
が出てくる。
古代各部族間では、「ナラティブ」の違いから「星座」も当然違っていた。
現代でも、これほどグローバルな世の中になっても、同様の概念がある。

筆者が出会った人のほとんどは、自分の信念のコミュニティは対話と討論を歓迎していると思っている。(中略)一方で、あいつらみたいなわけのわからない負け犬は相手にしないと言う。(p434)
昨今の政治主義の分断の象徴を見る思いがした。

p404で、
ソヴィエトも独自に核爆弾を製造した。
とあるが、リチャード・ローズ著の「原子爆弾の誕生」にあるとおり、スパイ無かりせば達成困難であったろうことは明確なので、当該表現は正確性を欠くと思う。