ファシズムとロシア

著:マルレーヌ・ラリュエル
訳:浜 由樹子
東京堂出版(2022年03月)
ISBN:9784490210644
原著は2021年出版。

一番最初に、
本書では、ロシアのファシズム・反ファシズムをめぐる論争をより広い文脈で検証する。そこではどんな反リベラル的あるいはポピュリズム的な指導者に対してであれ、「ファシスト」のレッテルを貼ることは、一種の知的降伏である。(p5)
と、牽制する。

ファシズムについては、p39で、
暴力的手段によって再構築された、古来の価値に基づく新たな世界を創造することで近代を徹底的に破壊することを呼びかける、メタ政治的イデオロギーと定義する。
とある。

さらに、p53で、
本書では、我々が現在目にしている「ファシズム」という用語の濫用が、我々の世界の構造的変化を説明するどころか、見えづらくしてしまっている、という立場をとる。
と拘束する。

具体的に、p58で、
プーチンその人をファシストだと定義すると、その言葉のより古典的な意味でファシスト(中略)を自称する、プーチンなどよりよっぽど過激な人物を評するための用語がなくなってしまう。
というように即断しないよう押しとどめる。

通読後、ロシアにとっては、
・(1945年を基準とした)ポスト・ソ連空間へのEUNATOの拡大に対する対抗として、ネオナチという幻想を構築した
西側にしてみれば、
・1990年代のソ連崩壊によるヨーロッパ秩序崩壊後の体制にたいする違反
という、お互いに噛み合わない・擦れ違った議論を基本にしていることの是正が必要・・・ということに思い至った。

何故今の時期に他国を侵略するのか?・・・ついても、5月9日に戦勝記念日を盛大に祝って、次期政権の備えを盤石にしたい・・・ということだろう。
それにしても、無辜の民を殺しても良いということには、決してならない。

ノモンハン事件で、新説を唱えた黒宮広昭インディアナ大学教授が、p131で言及されている。