世界はシンプルなほど正しい

―「オッカムの剃刀」はいかに今日の科学をつくったか-
著:ジョンジョー・マクファデン
訳:水谷 淳
光文社(2023/03)
ISBN:9784334962630

1285年、件のウィリアムはイングランドのオッカム村に生まれた。そのことから、「オッカムのウィリアム」と呼ばれた神学者である。
後日、(何故か)出身地呼称の方が後世に伝えられ、「オッカムの剃刀」として定着した。
それは、「ある事柄を説明するためには、必要以上に多くを仮定するべきでない」とする普遍的な指針である。

太陽が毎日東から出て西に沈むことを説明するには、大地が固定していて天空の方が回転する・・・という説明が直感的で分かりやすい。
が、そのための理論的な説明については、(不)必要な小細工が沢山必要だった。

コペルニクスは、理論を簡単にするために太陽を固定したが、円軌道に拘ったため、まだ小細工パラメータを要した。
ケプラーに至って楕円軌道を採用したことで、ようやくシンプルな説明で天体運航が説明できるようになった。

現代の素粒子物理学の標準モデルでは、クォークレプトン共に多くの素粒子が存在しているとされている。
ダークマターダークエネルギーも解明されていない。
ひも理論に至っては、10次元の想定が必要とされている。
これらの煩雑なところについて、いずれ「オッカムの剃刀」の名の元に一刀両断される日が来るだろうか?

p384の「ブラウン運動」の説明:花粉の中に含まれている微小な粒子
は、正しく記載されている。

p125の、レオナルド手稿について“ラテン語である”のは正しくない。
ダ・ヴィンチ庶子で有った故に正規教育は受けておらず、手稿はイタリア語で書かれていた。