匂いの帝王

―天才科学者ルカ・トゥリンが挑む嗅覚の謎-
著:チャンドラー・バール
訳:金子 浩
早川書房 (2003/12/15 出版)
ISBN: 9784152085368
本書p406から・・・
科学は冷静で、客観的で全知である、とわたしたちは信じたがっている。注目を集める価値あるアイデアは必ず注目を集めるはずだと。よいアイデアは残され、悪いアイデアは捨てられ、勤勉なものは栄え、怠惰なものは落ちぶれ、努力と正直なデータは報われると。
 だが現実はそうではない(中略)科学者も人間だ。既得権益が新しいアイデアを吹き飛ばす。エゴが創造性を押しつぶす。
 
「匂い」というよりも「香り」を人間がどのように認識しているかについて、著者は量子力学理論というノーベル賞受賞に匹敵する革新的なアイデアを考え付く。
だが、既存の理論の信奉者の壁は高く聳え立っていて、著者がネイチャー誌に提出した記事は結局、却下された。
 
上記の経緯を紹介した本。前半やや冗長だが、後半はどんどん読ませる。
 
彼はその考え方を推し進め、企業化しているようだ。
http://www.ted.com/talks/luca_turin_on_the_science_of_scent.html
「Subtitles」をJapaneseにすると、日本語字幕で見られるので、分かりやすい。
 
書中、気に入った箇所。P347
コクトーは、自宅が火事になったときひとつだけ持ち出せるとしたらなにを持ち出す?
 と聞かれて、”火だね”とと答えた
バーナード・ショーは、神にひとつだけ質問できるとしたら何を聞く?
 と聞かれて、”あなたはどうして、あなたが実在する証拠をこんなに少ししか人間にお与えになさらなかったのでしょうか?”と答えた

またモデルとなった「ルカ・トゥリン」は、「世界の香水ガイド」という本を出している。
香水の香りを、文字で著すことがことができるボキャブラリの豊富さに脱帽。