左足をとりもどすまで

著:オリバー・サックス
訳:金沢 泰子
晶文社(1994/12)
ISBN:4794925247
オリヴァー・サックス著「道程」で、p267~p275間、著者がノルウェイで崖から落ち、大腿四頭筋断裂事故に遭遇したことが記されている。本書はその出来事の詳細版。
自身医者なのだが、一気に患者の位置となってしまった。自分の左足の存在すら認知できない絶望。
実際、
スキーで両足骨折を経験したノルウェイの医師(p48)
足を骨折したことがあり、それがどんなもんかわかる医師(p223)
の理解と共感
一方、全然話を聞いてくれない外科主任医師との意思の断絶。
立場が変わって体験すると、今迄の見方から変わった体験ができる。

医者どもは海や岩礁や港を描いて、自分は机の前に座って、何の危険もなく船の模型を動かす人のようにわれわれに指図する。彼らを実際の中に投げ込んでごらん。どうしていいかわからなくなるから。-モンテーニュ『エセ―』第三巻13章(p251)
このような体験下、ウィキペディアで見ることができる著者のポートレイトの深いまなざしの理由が理解できる。