書評

世界史教科書内記述の疑問(その2)

山川出版「高校世界史B」2015年3月ISBN:9784634700321P126で、コロンブスは、今日のアメリカ大陸にも上陸したとの記述がある。 ウィキペディアでは、1498年5月、6隻の船で3度目の航海に出る。今度は南よりの航路をとり、現在のベネズエラのオリノコ川の河…

世界史教科書内記述の疑問

山川出版「世界史B」2015年3月ISBN:9784634700338P215で、フランス王フランソワ1世が、レオナルド・ダ・ヴィンチをパリに招待したとの記述がある。レオナルドの晩年は、ロワール川渓谷のアンボワーズ、クロ・リュセ城で過ごしている。セーヌ川流域のパリと…

数学の歴史物語

―古代エジプトから現代まで-著:ジョニー・ボール訳:水谷 淳SBクリエイティブ(2018/07)ISBN:9784797396287数学の歴史に興味があり、当該分野に詳しい英国の司会者が表した数学歴史解説書。最近詳しく判明した内容を豊富に含んだ内容で、数学のみならず…

人類の意識を変えた20世紀

―アインシュタインからスーパーマリオ、ポストモダンまで-著:ジョン・ヒッグス訳:梶山 あゆみインターシフト(2019/09)ISBN:978477269565720世紀といえば、ついこのあいだ・・・と思っていたが100年間には、世界史として教科書にも乗らない(間に合わない…

目的に合わない進化

-進化と心身のミスマッチはなぜ起きる-著:アダム・ハート訳:柴田 譲治原書房(2021/03)ISBN:9784562059119/9784562059126出版社による本書の内容肥満、依存症、暴力、フェイクニュース……進化は目的に適合するように進むはずではないのか?なぜ適応進化…

地図リテラシー入門

―地図の正しい読み方・描き方がわかる-+著:羽田康祐ベレ出版(2021年08月)ISBN:978-4-86064-666-02008年、平壌から発射された場合のミサイル射程地図が間違いと話題になった。2019年、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」は、ずさんな地…

サルファ剤、忘れられた奇跡

―世界を変えたナチスの薬と医師ゲルハルト・ドーマクの物語-著:トーマス・ヘイガー訳:小林 力中央公論新社(2013/03)ISBN:9784120044793ゲルハルト・ドーマクについてのウィキペディアの記述は簡単・簡素過ぎて、彼のことを正確に記述していない。キーワ…

世界史は化学でできている

-絶対に面白い化学入門-著:左巻 健男ダイヤモンド社(2021/02発売)ISBN:9784478112724現在までの科学(化学)の歴史を古今の参考文献から著者なりの知見に基づいて纏めた本。この種の紹介本には得てして、過去の文献を(何も裏取りすることなく)そのまま引…

生物と無生物のあいだ

著:福岡 伸一講談社現代新書(2007/05)ISBN:9784061498914著者は、昨今話題のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査を着想してノーベル賞を獲得したキャリー・マリスの「マリス博士の奇想天外な人生」を訳している。当該書発行当時:2000年頃は、PCR検査?エッ何そ…

少年時代

著:安野光雅山川出版社(2015年4月)ISBN:97846341507202020年12月に身罷った理数系に造詣が深い画人。故郷津和野の夢見がちな少年が過ごした日々と、絵描きをめざした青年期の思い出。好奇心いっぱいの少年の心を思い出し描いた本。勉強について、数学者藤…

伊丹十三選集

一、日本人よ! 編者:松家仁之二、好きと嫌い 編者:中村好文三、日々是十三 編者:池内万平岩波書店(978-4-00-028118-8、978-4-00-028119-5、978-4-00-028120-1)独身時代『ヨーロッパ退屈日記』を読んで、世の中に一流人が存在することを知った。切り口…

遺言未満、

著:椎名 誠集英社(2020年12月)ISBN:9784087816938巻頭に、日高敏隆の著作中の言葉人間は自分がいつか死ぬ、ということを知っているが、その他の生物はそのことを知らない(p8)が紹介される。著者は、2013年に「ぼくがいま、死について思うこと」という書…

アフリカの白い呪術師

著:ライアル・ワトソン 訳:村田 惠子 河出書房新社(1983/3)ISBN:0039088060961「訳者あとがき」で、著者のことをオーソドックスな科学とオカルトの中間領域に位置するワトソン(p225)と評している。同著者の「生命潮流」の中にも、・テニスボールの内外…

発明は改造する、人類を。

著:アイニッサ・ラミレズ訳:安部 恵子柏書房(2021/07)ISBN:9784760153947近代から現代の各種発明は、関係者が残した各種資料渉猟により、人口に膾炙している表層から一歩踏み込んだ内容を描くことが可能になった。 クリスマスプレゼントは、ベッセマーの…

ネパール・チベット珍紀行

著:ピーター・サマヴィル・ラージ訳:大出 健心交社(1990/05)世界紀行冒険選書ISBN:9784883020058原題:To the Navel of the World(世界のヘソへの旅)1980年代(?)の“秘境”への旅行記。ニセビザでネパールからチベットに侵入し、ヒッチハイクをしなが…

シャーマンの弟子になった民族植物学者の話

著:マーク・プロトキン訳:屋代 通子築地書館(1999/09)ISBN:9784806711834/9784806711841南米アマゾン地帯の(所謂)インディオの生活に飛び込み、各種の有用植物の効能を現地のシャーマンから聞き出した作者の冒険譚。 上巻p75で、イギリスの偉大な生物学…

DARPA秘史

-世界を変えた「戦争の発明家たち」の光と闇-著:シャロン・ワインバーガー訳:千葉敏生光文社(2018年9月)ISBN 978-4-334-96223-4国防高等研究計画局:DARPAは、ARPAの時期にインターネットの原型であるARPANET及び現在の「GPS」の原型の考え方を開発した…

神父と頭蓋骨

―北京原人を発見した「異端者」と進化論の発展-著:アミール・D.アクゼル訳:林 大早川書房(2010/06)ISBN:9784152091390本来ならば、優秀な進化論科学者になっていた人物(ピエール・テイヤール・ド・シャルダン)が、物心付く頃に浸ってしまった信仰の軛…

フェルマーの最終定理

著:サイモン・シン訳:青木薫新潮文庫(2006/06)ISBN:9784102159712著者の本は、2016.2/10に「ビッグバン宇宙論」で紹介している。本書は、1995年にアンドリュー・ワイルズによって完全に証明された数学の金字塔を一般向けに解説している。理数系において…

世界のたね

-真理を探求する科学の物語-著:アイリック・ニュート訳:猪苗代英徳角川文庫(2016年08月)ISBN:9784044001582/9784044001599若年層向けの科学概略史。著者なりの解釈で、文庫本上下巻に統一感が良く表されている。指摘箇所1.上巻p88:麦わらを編んだ海図…

恐竜はなぜ鳥に進化したのか

―絶滅も進化も酸素濃度が決めた-著:ピーター・D・ウォード訳:垂水 雄二文春文庫(2010/10)商品コード 9784167651725原著の題名は、"Out of Yhin Air":「薄い大気の中から」で、訳者あとがきには[成句として、“何もないところから”という意味もある]と記…

生命の歴史は繰り返すのか?

―進化の偶然と必然のナゾに実験で挑む-著:ジョナサン・B・ロソス訳:的場知之化学同人(2019/06)ISBN:9784759820072スティーヴン・ジェイ・グールドの「ワンダフルライフ」は、もう古典といっても過言ではないかもしれない。しかし、コーンウェイ・モリス…

脳のなかの幽霊

著:V・S・ラマチャンドラン/サンドラ・ブレイクスリー訳:山下 篤子角川文庫(2011年03月)ISBN:9784042982111人間の脳内の各箇所の不具合によって生じる各症例については、オリヴァー・サックスが多くの本を著している。本書は、インドの脳科学者が、ア…

神々の沈黙

―意識の誕生と文明の興亡-著:ジュリアン・ジェインズ訳:柴田 裕之紀伊國屋書店(2005/04)ISBN:9784314009782600頁を超える大著。人間は如何に「意識」を持ったのか? という疑問に筆者なりに解決策を提示した本。切り口としては、斬新な説得法だが、p142…

知ってるつもり

─無知の科学-著:スティーブン・スローマン/フィリップ・ファーンバック訳:土方 奈美早川書房(2018/04)ISBN:9784152097576世界は複雑なことは自明で、すべてを知ることなどとてもできない。個人が知っている情報はごくわずかであるというという意味におい…

ルーシーの膝

―人類進化のシナリオ-著:イブ・コパン訳:馬場 悠男/奈良 貴史紀伊國屋書店(2002/04)ISBN:9784314009102原著は、1999年発行なので、その後の発見等で人類進化の通説は変更されている部分もあるが、アウストラロピテクス・アファレンシスのかなりまとまっ…

観察力を磨く名画読解

著:エイミー・E.ハーマン訳:岡本 由香子早川書房(2016/10)ISBN:978-4-15-209642-5著者は、美術史家、弁護士。米国で、美術作品によって観察力・分析力を高めるためのセミナーを行っている。絵画鑑賞時に、ただ眺めるのでは無く、その中身の意味をバイア…

生物の中の悪魔

-「情報」で生命の謎を解く-著:ポール・デイヴィス訳:水谷淳SBクリエイティブ(2019.9)ISBN:978-4-8156-0159-1「マクスウェルの悪魔」という概念は、ミクロ領域で分子を一つ一つ対象にして運動を制御することができたら・・・という仮想の概念である。…

エピソードで読む 自動車を生んだ化学の歴史

著:井沢省吾秀和システムズ(2016/03)ISBN:9784798046372表紙の当該本の説明-自動車の誕生に貢献した化学を人物像とエピソード満載で図解-「化学」の進歩を「クルマ」という切り口で説明した本。「クルマ」にさほど興味がないまま、大きな自動車会社に入…

応仁の乱

―戦国時代を生んだ大乱-著:呉座 勇一中央公論新社中公新書(2016/10)ISBN:9784121024015著名本。教科書中の説明では、概要を説明することは難しく、日野富子に原因をおっ被せて、細川勝元と山名宗全が争い長期化した闘い・・・という記述だったように覚え…